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酵素はなぜ主要栄養素ではないのか?

最近でこそ、テレビや雑誌などで頻繁に取り上げられ、消化や新陳代謝に欠かせない栄養素であることがわかった「酵素」ですが、「脂肪、タンパク質、炭水化物」の3大栄養素はもちろん、これに「ビタミン・ミネラル」を加えて、5大栄養素、さらにプラス「食物繊維」で6大栄養素と言われるのですが、この中に酵素は含まれていません。
今、これらに酵素を加えて7大栄養素にしよう!という動きもあるらしいのですが、なぜこれまで主要な栄養素として考えられていなかったのか?
この謎について、この章では解説したいと思います。
まずは酵素の研究の歴史から
デンプンの消化・分解が行われたことが最初の発見

最初に人間が発見した酵素はジアスターゼ(現在はアミラーゼとも呼ばれる)というデンプンを分解する消化酵素でした。1833年、フランスで麦芽をすり潰した液体(この中にジアスターゼが含まれていた)をデンプンに作用させると、デンプン質が分解される事が発見されたのです。
その3年後、同じヨーロッパのドイツで1836年、胃液の中に肉(動物性タンパク質)を溶かす物質が存在していることを発見。タンパク質分解酵素ペプシンと命名されました。
この頃までは、まだ「酵素」という言葉はなくジアスターゼもペプシンも、ただ単にデンプンやタンパク質を分解する物質とだけ考えられていました。さらに両物質とも極めて小さいため、それ自体が顕微鏡などで確認されたわけではなく、それらを含む液体の発見にとどまるものでした。
酵素という言葉が生まれたのは1878年。ドイツのウィルヘルム・キューネによって、「酵母の中にあるもの」 という意味のギリシア語から「enzyme=酵素」と名付けられたのです。
酵母は様々な物質を発酵させて、お酒や納豆などの発酵食品を作り出す物質ですが、この中には多数の酵素が含まれていますので、この名前が付けられたんですね。
ノーベル賞化学者の「酵素の発見と誤解」
始めて酵素を結晶化、でもちょっと勘違い

1926年にアメリカのジェームズ・サムナー博士が、ナタマメから尿素を分解する「ウレアーゼ」という酵素を結晶化して取り出すことに成功し、世界で初めて酵素の実体を発見しました。
サムナー博士は自らが発見した酵素ウレアーゼについて「タンパク質でできている」と発表し、ノーベル化学賞までも受賞しました。
しかし、実はこれはサムナー博士の勘違いでして、ウレアーゼの外側の「骨格」がタンパク質であって、中身の酵素本体は別の栄養素であることが現在ではわかっています。
ですが当時は、ノーベル賞までとった博士の考えと言うことで、「酵素=タンパク質」という誤解が広まり、「タンパク質さえとれば酵素もとれて、消化にも健康にも良い」となり、肉や乳製品を中心とした西洋式の「高タンパク・高脂肪」の食事が流行するきっかけとなったのです。さらには、3大栄養素に仲間入りしたのは、酵素ではなくタンパク質になったのです。
このサムナー博士の「酵素=タンパク質」という誤解が、「酵素が主要栄養素に含まれなかった1番の原因」と言えるでしょう。主役をタンパク質に持って行かれてしまったんですね。
その後、酵素の誤解が解けるまで

20世紀後半になると、解析技術の進化により、さらに酵素の研究が進みます。
1982年にはアメリカのトーマス・チェック博士らが、タンパク質(の骨格)以外で初めて酵素作用を示す物質(リボザイム)を発見し、酵素=タンパク質では無いことが証明されました。リボザイムはリボ酵素とも呼ばれ、HIVの治療に役立つのではと期待されている注目の酵素です。
トーマス博士は、この発見でノーベル化学賞を受賞しています。酵素本体の発見がそれだけ重要だった証ですね。
酵素の大きさが極めて小さいことも、発見が遅れた理由だと思います。種類にもよりますが、酵素の大きさは、100万分の5〜20mm位と言われています。大きさが小さくても、食べ物に含まれる量が少なくても、ものすごくよく働く「少数精鋭」の栄養素です。
現在では、「食べ物の消化、筋肉の運動、脳からの指令、体の新陳代謝などの全ての生命活動が、酵素なしでは行われない」と判明し、非常に重要視されています。
また、ビタミンやミネラルも酵素のアシスタント役をする「補酵素」であると考えられ、主役は酵素であるという説が支持されています。
(この特集おわり)
この特集を組むにあたり参考にした文献です。
エドワード・ハウエル著 「酵素栄養学(邦題キラーフード)」
鶴見隆史著 「スーパー酵素医療」 グスコー出版














